ストラテラ1日目

喉が死ぬほどいたくなった。こんな薬はストラテラが初めてで少しあせる。

ADHDと自覚したのはもう十年以上前の話。インターネットの簡易検査を遊びでやってみて気がついた。

よく財布を忘れたり鞄を学校に起きっぱなしにしたり、誰かの助けがなければ宿題などできない。いつも時間ギリギリの外出で、部屋は汚かった。

ああ、私は障害児なのだ。そう思った。

それでいて精神科にはいかなかった。家族が望まなかった。母は私を精神病院につれていかず、個性として“許す”、という態度で私に接していた。あるとき、精神病院に連れていかないのだから感謝しろ、というふうに私に怒鳴ったので、それは間違いない。父はそれは障害でなく怠惰だと切り捨てた。私自身も、精神病院は悪いものだ、怖いものだと思っていた。だからなんの処置もせず。症状が和らぐだろう成人まで待つことにした。

あと5年、あと3年。そうして我慢した。我慢したが結局治ることはなく、寧ろ悪化の一途を辿った。

そして社会に出て困ったことになった。事務が電話を受けるのも含めて全く出来ない。私は会社で半分クリエイター半分事務という、アンバランスな職に就いている。

クリエイターでも、たまに集中が切れどうしようもないのに、事務が全く出来ないとなると、契約社員の身ではすぐにお払い箱だ。

私は、まわりからは自由な人間だと言われるが、私からすれば常に切り捨てられる恐怖に怯える人間だ。

そのなかでも、今回のは一番酷い恐怖だった。社会から無能と切り捨てられるのは、家族に切り捨てられるよりも怖かった。

それで、ストラテラを飲んでいる。正式な診断は降りていないが投薬の効果を見て判断するとのことで、かもしれないで治療されるのは怖いが、まあ予約できないだの、診断結果に時間がかかるだのをすっ飛ばせるのは、大変ありがたかった。

それで1錠目。喉が焼けるように痛くてなかなか寝付けなかった。朝になると体が火照って、すこし頭がスッキリ気分だった。いちもつは全く勃起しなかった。副作用らしい。

なんだ、医者は効果がでるまで数週間といったがすぐじゃないかと、思っていたが効果は1時間もしないできれた。

いつも通りの混線したラジオみたいな世界に戻った。